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118 英語教育のあり方

英語は意思疎通のための道具に過ぎない

 

 英語を社内の公用語にするという会社が少しずつ出ている。楽天やユニクロがマスメディアに取り上げられ、入社式において英語でスピーチする社長の姿が放映された。日本の会社で、しかも外国人社員はごく少数なのに、英語を公用語にするという施策に筆者は違和感を禁じ得ない。

 

 筆者は、外国の人たちと議論する機会が良くある。意思疎通するために、相手が理解できる言語を使って話す。日本語が堪能な方であれば日本語を使うが、日本語がわからない方であれば英語を使ったり、他の言語を使ったりする。言語は道具であり、目的ではない。その場に最も適した道具を選ぶことが肝要である。

 

 しかし、最近の風潮を見ていると、いい道具を持っていることこそが重要だと言われているように見える。特に、学生たちは、英語ができなければいい会社に就職できないと思い込んでいる節がある。英語は良くできるけれども仕事ができない人、TOEICで900点以上のスコアを出すけれど、社内で重要な仕事を任されていない人がたくさんいるという事実は、学生にはほとんど伝わらない。

 

 日産自動車に勤めている友人がこんな話をしてくれた。

「日産は、事実上、外資系の会社になっています。社内に外国人がたくさんいて、英語で会議を行うことは日常茶飯事です。でも、決して英語を公用語にすることはありません。日本語がわかる人たちばかりであれば日本語で会議をしますし、日本語がわからない人が一人でもいれば英語で会議をします。わかり合うためにどうするかが大事なのです。社内の会議なんて、日本語と英語が入り乱れて使われています。それで、参加者全員が意思統一できればいいのです。」

 

 

日本人の外国語下手は国際標準

 

 私たちには、外国語コンプレックスがある。特に、それは英語に対して顕著だ。でも、人口規模が5000万人以上の国に暮らす人たちは、おしなべて外国語が不得意である。おそらく世界中で最も外国語が下手な国民はアメリカ合衆国の人たちだろう。彼らは、自国の言語を使って世界中で生きていけるので、わざわざ外国語を覚えようとはしない。

 

 ヨーロッパでは、ドイツ人、フランス人、イギリス人、イタリア人が外国語下手の人たちである。国内市場が大きいので、自国の言語だけで十分仕事をしていけるからだ。他方、ベルギー、オランダ、デンマーク、スウェーデンといった国の人たちは外国語がとても上手だ。それは、国内市場が小さいので、他の国々と交易しないと生きていけないからである。

 

 日本は人口規模の大きな国である。日本人が外国語下手なのは、世界標準からすれば当然だと言える。日本は貿易立国だと言われるが、国内総生産に占める輸出の割合は10~15%程度である。国民の2割くらいは外国語を駆使して他国と交易してもらわなければならないが、残りの8割は外国語を話さなくても十分に生きていける。英語教育を論じるとき、この事実を忘れてはならない。

 

 

外国語教育は読み書きを中心にすべきだ

 

 外国語教育は必要ないというつもりは毛頭ない。外国語の知識は発想を豊かにするし、外国人と意思疎通ができるのは素晴らしいことである。しかし、時間は有限な資源であり、その資源をどう使うかをもっと真剣に考えるべきである。

 

 英語の発音は日本語にないものが多いので、小学校の頃に耳を慣らしておくのは効果が高い。しかし、それは「音に慣れる」程度で十分である。多くの日本人にとって、英語で会話するよりも、英文を読んだり書いたりする能力を使う機会の方がはるかに多い。書ければ話すことはすぐにできるようになる。最近の英語教育は、会話能力の向上に重点を置いているようだが、日本の経済力強化を考えたとき、読み書きの能力を高める方が効果的だと言える。

 

 実は、小学校から中学、高校にかけて最も鍛えなければならないのは日本語の能力である。外国語は母国語の能力を決して超えられない。母国語で話せないことは、外国語でも話せない。母国語で論理的に話せない人は、外国語も論理的に話せないのである。

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