職業人生の設計図づくり(下)

職業生涯の設計図を描くために

 これまで二回にわたって、職業生涯の設計図を描くことがいかに大切かを述べてきた。最終回にあたる今回は、具体的にどのようにしたら設計図を作れるのかを考えてみよう。


 設計図を描くには、少なくとも次の四つの作業が必要になる。(1)これまでの職業経験を一年ごとに振り返ること、(2)自分が就きたかった職業を思い出 すこと、(3)これまでの人生での成功と失敗を分析すること、(4)これからどのような人生を送りたいかをはっきりさせること。それぞれについて、実際の 手法を紹介しよう。

 


(1)これまでの職業経験の振り返り


 働き始めてからこれまでの経験を振り返るには、一年ごとに何があったかを思い出してみるとよい。最初の年に受けた訓練内容、最初に配属された仕事、最初 の上司、職場の先輩に始まり、仕事の上で印象に残ったことなどをできる限り具体的に書いていく。私たちは、日々起こったことを忘れながら暮らしている。し かし、経験したことは記憶のどこかに残っている。過去を思い出す作業を続けていると、意外と細かいことまでよみがえってくるものである。

 この作業をするときのコツは、思い出せなかったら無理をせずに次の年に進むことである。まず大きな出来事を年表に書き込み、 だいたいの流れをつかんでから始める方法も有効である。細かいところが思い出せなかったら、どんどん先に進んだ方がいい。別の記憶との関連で思い出した ら、その時に戻って書き込めばいいからだ。

 

(2)自分が就きたかった職業は?

 子供は、「大きくなったら○○になりたい」という希望を語る。その職業の社会的地位に関係なく、自分が興味を持った仕事を無邪気に話す。子供の頃、自分はどのような仕事にあこがれていたのかを思い出してみよう。子供は移り気だから、たくさん出てくるはずである。

 記憶の中から引っ張り出した仕事について、なぜ自分はその頃、その仕事に就きたいと思っていたのかを考えてみる。たわいのない子供の戯れ言かもしれないが、その中に、案外、自分の本当の気持ちが隠されているものである。

 

(3)これまでの人生での成功と失敗

 これまでの人生で、「これは成功したな」、「あれは失敗だったな」という経験を、それぞれ十項目ずつ思い出してみよう。そし て、なぜ成功したのか、なぜ失敗だったのかについて、冷静に分析してみよう。この作業をするとき、できるだけ客観的に事実を見ることが必要である。「たま たまうまくいった」とか「運が悪かったから失敗した」というのではなく、努力や準備の水準、周りの人の巻き込み方、状況判断などについて、的確だったのか 甘かったのかを整理してみるとよい。

 

(4)これからの人生についての確認

 これからどのような人生を送りたいのかは、年代によって大きく異なる。三十歳代であれば、家のローンや子供の教育など金銭面 で考えなければならないことが多い。他方、五十歳代後半になると、金銭よりも生きがいや働きがいに重点が移っていくかもしれない。今後どのような仕事をし ていくかは、これからの自分の人生をどう組み立てるかという点と切り離せない。多くの人は、この部分が整理できないために、どのような仕事のしかたをすれ ばいいかが定まらないのである。

 

 以上四つの作業をすると、自分は何ができて何が得意なのか、何をめざして生きていこうとしているのかが見えてくるはずである。具体的な職業生涯の設計図を片手に、自らの人生を納得いく形に組み上げていかれることを期待して、この三回ものを終わりたい。

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール