私たち日本人にとって、民族問題は理解が難しい分野の一つです。「あなたの国籍は?」と聞かれれば「日本」とよどみなく答えられますが、「民族は?」と聞かれると、一瞬、答えに詰まってしまいます。
民族って、どうやって決まっているのでしょうか?
居住地域、血筋、家族… いろいろな基準が考えられますが、どれも曖昧ですね。
クロアチアでは、「自己申告」で民族が決まっています
旧ユーゴスラビアでは、ほぼ10年に1回の割合で国勢調査が行われていました。国勢調査の調査票の中に「あなたは何民族ですか」という質問があり、その回答結果で民族の構成比が計算されていました。
1948年と53年に行われた国勢調査には、「ユーゴスラビア人」という選択肢は用意されていませんでした。セルビア人、クロアチア人、マケドニア人といった選択肢が並び、「その他」を選ぶと自分で「○○人」と書くことができました
旧ユーゴの国勢調査で「ユーゴスラビア人」という集計が始まったのは1961年のことです。約32万人が「ユーゴスラビア人」だと記載しました。当時のユーゴスラビア全体の人口は約2000万人でしたから1.6%になります。
お父さんはマケドニア人、お母さんはクロアチア人、自分はセルビアで生まれてセルビアに住んでいる―自分はいったい何人なんだろう? このような悩みを持つ人が増えてきて生まれたのが、ユーゴスラビア人という言い方でした
1971年の国勢調査では27万人とやや減少しましたが、81年には122万人になりました。人口の約6%です。1991年にも国勢調査が予定されていましたが、共和国の独立が相次いだために中止になりました
民族の象徴は言葉だと言われますが、それ以上に自己認識が重要です。アイデンティティをどこに見いだすかが民族を決めるのですね。
私たち日本人も海外に出ると「日本」を強く感じます。たまには外国に行って日本を見ることが必要だと思います
投稿者プロフィール

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法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
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