労働組合は情報創造機能を高めよ!

 労働組合の存在感がますます希薄になっている。昨年秋の民主党を中心とした連立政権の登場によって、政治の世界での注目度は上がった。しかし、最近の民 主党の状態から、労組に対する支持よりも批判の方が多く聞こえてくる。「こんなはずではなかった」と歯ぎしりしている労組幹部はたくさんいるだろう。政権 交代は、労組の社会的な存在感を高めるはずだったのに、逆に作用している。


 目を企業内に転じても、労働組合があってよかったという声はなかなか出てこない。春の賃金交渉では、目立った成果をあげることができなかったし、雇用保障も絵に描いた餅になりつつある。労働組合は、その役割を終えてしまったのだろうか。

 筆者の答えは「否」である。労働組合は、日本社会の財産であると同時に、企業の財産である。労働組合があることによって、社会のしくみづくりに働く者の 意見を反映させることができる。また、労働組合があることで、経営側はいろいろな面で助かっている。それが多くの人に見えていないところに問題がある。こ こでは、紙幅の制約から、企業内の労組の役割にしぼって考えてみたい。キーワードは、労働組合の情報創造機能である。

 企業の中では、本当に大切な情報は案外伝わらない。特に、職場で発生している問題についての情報は、下から上にあがっていかない。それは、管理職は、自 らの落ち度と見られるような情報はできるだけ上司に知られないようにして、問題を解決してから報告したいと考えるからである。下のレベルで問題が解決され ればそれでいいとも言えるが、大所高所から見たとき、大きな問題の前兆になっている場合がある。そうだとすると、経営者は、少しでも早く実態を知って対処 しなければならない。

 経営者が従業員に向けて発する情報も、正確に伝わっているかどうか疑問である。経営者が使う言葉と現場の第一線で使われている言葉が必ずしも同じではな いからである。また、経営者は会社全体のことを考えて言葉を発するが、受け取る側は自分の職場を前提にして話を聞く。すると、経営者の思いと現場の理解が 食い違うことがある。これを是正して、経営者の本当の考えを従業員に伝えるのが管理職の役割だが、管理職も経営者の言葉を正確に理解していない場合が多 い。

 そこで登場するのが労働組合である。現場で発生している問題をいち早く経営者に伝えて、迅速な対処を迫る。経営者が考えていることを労組幹部が直接聴い て、一般組合員がわかる言葉で噛み砕いて伝える。筆者は、これを労働組合の情報創造機能と呼んでいる。

 情報は色をつけないと伝わらない。見出しのない新聞を想像していただきたい。新聞を開いて活字がびっしり並んでいたら、たぶん誰も読まないだろう。見出 しがついているから、私たちは記事に興味を持ち、読んでみようと思うのである。見出しをつけるとは、情報に色をつけることに他ならない。

 労働組合は、企業組織の内外を流れている情報に色をつけ、経営者と組合員の双方に的確に伝える役割を担っている。この活動に派手さはないが、健全な企業 経営を縁の下で支えていることに疑問の余地はない。この点を労働組合はもっと自覚し、どうすればより質の高い情報創造機能を果たせるかを考えなければなら ない。それが、労組の存在感を高める第一歩になるはずである。

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
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