高齢者雇用には不断の能力開発が必要だ!

1.はじめに―高齢者雇用は避けて通れない

 高年齢者雇用安定法が2004年に改正され、2006年から段階的に65歳までの雇用確保措置をとることが義務化された。これは、公的年金の定額部分支 給開始年齢の引き上げを意識したもので、2013年4月以降は65歳までの雇用を確保することが企業に求められるようになる。公的年金財政の問題を企業に 押しつけるのはけしからんという声も一部にはあるが、日本社会が急速に高齢化していく中で、企業として一定の社会的責任を果たす必要があることは論を待た ない。


 どうせ対応しなければならないのなら、この制約条件をうまく使って企業の競争力強化に役立てた方が得策である。しかも、政府は「70歳まで働ける企業」 というキャンペーンを2007年に始めた。就業規則で70歳までの雇用措置を明記すれば補助金が出る。これも使いようによっては企業経営にプラスになる。

 この小論では、中高年の能力開発を通して彼らの力を高め、これからの競争を勝ち抜く力を蓄える方策を検討する。「高齢者雇用が企業を強くする」ことを実例を通して考えてみたい。
2.50歳代の能力開発が問題だ!

 従業員が65歳あるいは70歳まで働き続けるには、企業が雇いたいと思う能力を持っていなければならない。企業は、福祉政策として高齢者を雇うことはし ない。企業にとって必要な能力を持っており、賃金に見合った結果を出してくれると期待しているから高齢者を雇うのである。企業側からすれば、自社の従業員 が60歳を過ぎても成果を出せるだけの能力を維持するにはどうすればいいかを考える必要がある。能力維持は、企業か従業員のどちらか一方の責任ではなく、 両者の協力によって実現できるものである。

 能力の維持には不断の能力開発が欠かせない。何歳になっても新しいことを学ぶ機会があることが重要である。しかし、現実は「不断の能力開発」からはほど遠い。

 厚生労働省が2005年に実施した「第1回中高年縦断調査」を見ると(表1)、仕事のための能力開発や自己啓発をしたのは、50~54歳男性の 36.0%、55~59歳男性では29.7%であった。女性については、50歳代前半が22.8%、50歳代後半が16.9%にとどまっている。「勤め先 が開催する研修に参加した」に注目すると、男性の場合、50歳代前半が21.3%、後半が16.6%、であるのに対して、女性ではそれぞれ13.6%、 9.7%になっている。50歳代になると、従業員の教育訓練に企業も熱心でなくなる姿が見て取れる。

 厚生労働省が2009年に実施した「能力開発基本調査」(個人調査)にも同様の傾向が現れている。何らかのOFF-JTを受講した割合は、年齢とともに低下し、50歳代で32.4%、60歳代で21.1%になっている。

 65歳までの雇用を実現するには、50歳代後半になっても何らかの能力開発を続ける必要がある。しかし、これら2つの調査が示すように、企業も従業員自 身もたいした能力開発を行っていない。これでは60歳までの雇用が関の山で65歳まで雇うとなると、企業側の負担感はとても大きいだろう。ましてや70歳 までの雇用など到底おぼつかない。政府の掛け声だけでは問題は解決しないと言えよう。

 では、どうすればいいのか。問題は50歳到達時の意識づけにある。次にその点を検討しよう。

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
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