高齢者雇用には不断の能力開発が必要だ!(2)

3.50歳を対象としたリフレッシュ・ワークショップ
50歳がちょうどいい


 20歳過ぎに働き始めて65歳まで働くとすると、その期間は約45年である。70歳までの雇用を考えると実に50年になる。45~50年の長きにわたって第一線で働き続けるには、企業が雇いたいと思うような能力を持ち続けることが必要である。

 図1は、職業生涯を図式化したものである。20歳頃に働き始め、10年くらい経過した30歳前後で自分なりの得意分野を見つける。その分野でずっと職業 生活を送れる人もいれば、途中で転換を余儀なくされる人もいる(キャリアチェンジ)。企業の中で昇進や昇格があり、中には管理的な仕事に就くこともあるだ ろう。あるいは、勤め先の企業が業績不振で転職しなければならなくなるかもしれない。毎年のように予期しない出来事が起こるのが人生である。文句を言って もしかたがない。起こった事態には対応しなければならないし、自分から変化を求めていくこともある。

 働き始めてから約30年経過した50歳の時点で、これまでを振り返り、今後を考える機会を持つことが有効である。45歳では早すぎるし、55歳では遅す ぎる。45歳だとまだまだ体力も気力も充実しているので、これまでの延長線上でしか将来をとらえられない。他方、55歳だと残りの職業人生が限られてくる ので。そこから変化しようとしても限界がある。筆者の経験から言っても、50歳くらいがちょうどいいと言える。

リフレッシュ・ワークショップ

 筆者は、2006年から3年にわたって、ある大企業の50歳到達者を対象とした研修を担当した。この研修は、筆者が独自に開発したもので、3つのセッ ションから成り、お昼の休憩時間をはさんで約6時間かかる内容である。年間20~25回、3年間で約70回開催し、合計で1000人近くの人たちが参加し た。このプログラムの紹介を通して、50歳でその後の職業人生を問い直す意味を考えてみたい。

(1)研修のねらいと参加者へのメッセージ

 最初に約50分かけて、研修のねらいと意義を説明する。筆者は、この研修に「自分の中には自分の知らない自分がいる」というタイトルをつけている。その意味を冒頭に説明する。

 50歳にもなると、自分のことはだいたいわかったつもりでいるが、実は、自分の中にはまだまだ自分の知らない部分がたくさん隠れている。まだ会ったこと のない自分にどれだけ会えるかで、50歳以降の人生の豊かさが決まる。自分の中にある、まだ会ったことのない自分に会うには、一人で部屋に籠もって考えて いたのではダメだ。多くの人と会って、いろいろな話をすることが有効である。人との会話、コミュニケーションの中から発見できることは多い。今日一日、 様々な話をして、自分の中にある知らない自分に会ってほしい。

 この説明に続けて、3つのセッションの目的を提示する。第1セッションは、自分の強みを知ることが目的である。これまでの職業人生を振り返り、何があっ たかを整理することで自分は何ができるのかを確認する。第2セッションは、50歳代の従業員に求められる役割を考えることである。グループごとに一つの発 表資料を作ってもらい、50歳代に求められていることを整理する。そして、第3セッションで、自分はこれからどのような役割を担うのかを考えてもらう。そ して、そのために明日から何に取り組むのかを決めて、みんなの前で発表する。

 以上の説明を様々なエピソードを交えながら行うと、約50分が経過する。ここで小休止をとる。この年代の人には喫煙者が比較的多いので、一定時間ごとにニコチン補給の場を設けることが重要だと考える。

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール