顧客満足と従業員満足は車の両輪(5)

4.ESをCSに結びつけるには…

 以上、従業員満足を高めるにはどうすればいいかを述べてきた。ここで忘れてならないのは、従業員満足の向上は手段であって目的ではない点である。従業員満足が顧客満足に結びつき、企業業績の向上に貢献しなければ意味がない。

ESとCSは車の両輪

 従業員満足と顧客満足は、車の両輪のようなものである。どちらかが強すぎる(あるいは弱すぎる)と、車はまっすぐ進まなくなる。これでは、いい経営をし ているとは言えない。従業員満足と顧客満足は、相互にチェックを受けることで高まっていくのである。

 従業員の怠慢でお客様ご迷惑をかけたとき、その従業員を厳しく罰するのは当然である。同時に、お客様が理不尽なときは、毅然とした態度でお客様に接する ことも必要である。あるレストランの女性オーナーは、数回にわたって従業員に対して失礼な態度を取ったお客様のご来店を拒否した。「経営者として守るべき は従業員であって、お客様ではない」と明言し、従業員の信頼を高めた。このような経営者の方針は、お店の雰囲気を良くし、より質の高いお客様に利用しても らえるレストランに育てていくことにつながる。

人を育てる管理職の育成

 従業員は、日々の仕事を通して様々な経験をする。経験の幅と深さは、従業員の能力を向上させ、より高い顧客満足をもたらす。しかし、最近、管理職が忙し すぎて部下と向き合う時間が十分にとれないという声をよく聞く。景気の低迷から要員管理が厳しくなり、ギリギリの人員で仕事をさせていることがその原因で ある。その結果、従業員は仕事に追われ、成長感や達成感を得ることなく、長時間労働に追い込まれている。これでは、従業員満足は高まるどころか、低くなる 一方である。このような状態でどんなに顧客満足を求めても、画餅でしかない。

 いま必要なことは、従業員が朝起きたとき、「さあ、今日も会社に行って頑張ろう!」と前向きになれることである。そのためには、第一線で従業員と接して いる管理職の行動が重要である。管理職は、仕事目標の達成という短期目標と部下の育成という中長期の目標の同時達成を求められている。仕事が忙しくなって くると、短期目標にばかり目を向け、中長期の目標がおろそかになってしまう。そこを踏ん張って部下の育成に時間と労力をかける管理職を増やしていかなけれ ばならない。

 管理職の尻をたたくだけでは何の解決にもならない。管理職が動きやすい仕組みづくり、管理職が部下育成に時間をかけられる体制づくりが急務である。従業 員満足の出発点は職場にあることを再確認し、部下を育てる管理職の育成と彼らが本来の役割を果たせるようにすることでしか企業競争力は高まらない点を強調 しておきたい。

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール