106 子どもから大人への転換

 

最近の若者を理解するためのキーワードは、「与えられ慣れている」「教えられ慣れている」「他人のせいにする」の3つだと思います。

 

少子化の中で育った彼らは、待っていれば親や祖父母がいろいろなものを持ってきてくれました。自分から取りにいくという経験をしないまま、大人になっています。また、学校では、教師が懇切ていねいに教えてくれるため、「自分がわからないのは先生の教え方が悪いからだ」と平気で言います。自分の理解力が足りないからだとか、まだまだ勉強が不足しているからだとは考えないようです。


これは、3つ目のキーワードにつながります。仕事の上でミスをしたとき、「きちんとした指導を受けてこなかったからできなかった」とか「マニュアルが整備されていないのが良くないのだ」といった言い訳をする若者がたくさんいます。あまりにも平然と言い切るので、指導している側が悪いのではないかと錯覚してしまいます。

 

 

 このような若者が増えたのは、子どもから大人への切り替えがうまくできていないからだと思います。高校生までは、与えられた課題を正確にこなすことを求められます。解くべき問題は与えられ、その解法も教えてもらえます。

 

 しかし、働くようになると、自分で問題をみつけ、解決方法を自分の頭で考えて実行することを求められます。指示されるのを待っていたのでは一人前の仕事はできません。この間には大きな溝があります。その溝を埋めるのが大学教育の課題になっています。

 

 18歳まで与えられることに慣れてきた若者が、大学の4年間で、自分の頭で考えて行動する人間に大転換しなければならないのです。これは、なかなかたいへんです。

 

 以前は、企業に入ってから徐々に慣れていくことが許されました。一人前の仕事の仕方を身につけるのに3年くらいはかかるだろうと思ってもらえました。しかし、経済環境が厳しくなる中で、新入社員として入社すると同時に「一人前」であることを求められます。多くの若者は、この点にとまどっているのだと思います。

 

 若者の過半数が大学に進学するようになっています。子どもから大人に転換させる役割が大学教育に求められています。ここ10数年、キャリア教育という名の下に、大学はこの課題に取り組んできました。しかし、決して成功しているとは言えません。企業、家庭、大学が連携して取り組まなければならない課題だと思います。

 

次回のブログで、私なりの解決策をお示ししたいと思います。

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール