109 管理職の役割 その1 やめる業務を判断すること

 

 管理職研修を頼まれたとき、参加者に最初に考えてもらう質問があります。「管理職の役割は何ですか?」

 

 4~5人のグループに分かれて座っていただいて、いきなりグループ討議をします。「管理職の役割として重要なものを3つ、グループで決めてください」とお願いして、グループごとに意見をまとめてもらいます。

 

 必ず出てくるのが、「課の課題達成」と「部下の育成」です。「他部署との調整」という項目も出てきます。これまでたくさんの企業で管理職研修を行ってきましたが、今回のタイトルである「やめる業務を判断する」という項目は一度も出たことがありません。

 

 しかし、私は、これこそが管理職に求められている最も重要な役割だと考えています。

 

 

 ピーター・ドラッカーは『イノベーションと企業家精神』の中で次のように書いています。「廃棄とは、あらゆる種類の組織が自らの健康を維持するために行っていることである。いかなる有機体といえども、老廃物を排泄しないものはない。さもなければ自家中毒を起こす。」(p.177)

 

 必要なくなったものを廃棄するのは、有機体が健康を保つためには必要です。組織も有機体なので、老廃物を廃棄していかなければ存在できなくなってしまいます。

 

 企業内では、毎日のように新しい課題が出てきます。大半の管理職は、既存の課題をそのままにして、新しい課題に対処することを部下に求めます。これでは、時間がいくらあっても足りません。新しい課題が出てきたら、これまでの課題を整理して、「これはもうやらない」という判断を下す必要があります。

 

 多くの管理職が廃棄する業務の判断をせずにいると、組織の中ではおかしなことが起こってしまいます。全体が見えていない担当者が、やる業務とやらない業務を判断しているのです。部下も生身の人間ですから、24時間働き続けるわけにはいきません。残業時間がゼロにはならないにしても、適当なところで仕事を切り上げないと健康を害してしまいます。

 

 新たに出てくる業務と既存の業務を見比べながら、「これは、もう一度管理職が聞いてきたら、そのときに取りかかろう」と決めて一部の業務を放っておくのです。管理職から聞かれなければ、その業務は廃棄されたことになります。聞かれれば適当に受け答えをして、取りかかることになります。

 

 組織の衛生環境を正常に保つには、廃棄するもの(やめる業務)を管理職がしっかりと判断することが必要です。

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
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