採用内定とコミュニケーション能力

 大型連休が終わり、企業の新卒採用が佳境に入っています。2010年4月採用予定の新規学卒者に対して、内定を出し終わった企業もありますが、大半はこれからです。

企業の採用活動を見ていると、ここ15年くらいの基本姿勢は「迷ったら採るな!」です。「この学生は大丈夫だろうか?」という疑問がわいたときに、採用をしない決定をするというものです。

どんなに厳しい採用環境でも、複数の企業から内定をもらえる学生がいます。他方、採用状況が良くても内定が出ない学生がいます。内定をもらえるか否かの分かれ目になっているのがコミュニケーション能力です

 

コミュニケーションとは、わかり合おうとするプロセスです。相手に伝えたいことがあるときやわかってほしいことがあるとき、言葉を介して自分の意思を伝えたり、相手の考えを確かめようとします。言葉の体系は、人によって違うので、相手が持っている言語体系を考慮しながら言葉を組み立てる必要があります

 

会社に入ると、自分とはまったく違う言語体系を持った人と一緒に仕事をしなければなりません。年齢、出身地、受けてきた教育、仕事の経験など、すべて異なる人たちの集合体が会社です。それに加えて、取引先の人たちとのコミュニケーションがあります。他社の従業員は、自社の人たち以上に多様性があります。そういった人たちと会話して考えを共有しないと、仕事は前に進みません。

 

 コミュニケーション能力は、短期間の教育によって飛躍的に伸びるとは限らないという特徴を持っています。仕事に関する知識であれば、数カ月間集中して勉強することで相当な水準まで引き上げることができます。

 

しかし、コミュニケーション能力は、相手を気遣う気持とか相手の立場に立って考えるといった全人格的な営みであるため、形成に時間がかかります。いくつかのルールやコツは研修で教えられますが、相手を思いやる気持は一朝一夕では身につきません。そのため、採用担当者は、目の前にいる学生がどれくらいのコミュニケーション能力を持っているかを見極めようとするのです

 

コミュニケーションは、相手の考えを知り、自分の考えを伝えるための言葉のやり取りです。相手の質問が理解できなかったら、たずね返すことが重要です。

 

採用面接の担当者に話を伺うと、質問していないことを勝手に話す学生がいるそうです。答えにくい質問や自分が考えたこともないことを質問されたとき、何も話せないことを避けようとして、いきなり志望動機を話し始めるといいます。これでは、コミュニケーション能力がないと判断されてしまいます

 

質問内容がわからなければ聞き返せばいいのです。ただし、「わからないから繰り返してほしい」では能がありません。「今のご質問は、このように理解したのですが、それでよろしいでしょうか」という聞き方をすれば、コミュニケーション能力があると思ってもらえます。

 

コミュニケーション能力を高めるには、語彙を豊富にすることが必要です。語彙を増やすには本を読むことが有効な手段です。語彙は、取り込んだだけでは使えるようになりません。話をしたりものを書いたりするときに使ってみて、語感や用法を確かめることが必要です。

結局は、毎日の積み重ねですね。正しい日本語を使うように気をつけて、今日も過ごしたいと思います

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール