管理職の2つ目の役割は、部下に考える習慣をつけさせることです。前々回のブログで、幸運の女神の前髪をつかむには、考え続けていることが必要だと書きました。前髪をつかめるような組織にすることが管理職の大切な役割です。
考えることは読書と同じで「習慣」です。いつも続けていると、それが当たり前になります。
「みんな仕事をしているのだから、毎日考えている。何を今さらそんなことを言うのだ。」という反論が聞こえてきそうですが、ここで言う「考える」は「多様な発想を持つ」ということです。
確かに、仕事をしていると考えます。しかし、通常の業務だと、考えなくてもできるようになって来ます。それは、考えているようで考えていない状態です。通常の業務でも、いつもとは違った方法をとってみようとか、アプローチのしかたを変えてみようとなると、考えます。管理職は、部下にこのような仕事のしかたを植え付ける役割を担っています。
例えば、部下が報告に来たとき、「こういう別の視点からこの業務を見るとどうだろう?」という質問を投げかけてみます。慣れ親しんだやり方ではなく、別の方法を試させるのです。すると、部下は否応なしに考えます。
管理職は、ときには弱みを見せて、部下の思考を刺激することも必要です。部長から新しい業務を指示されたとき、「これはみんなで考えると良さそうだ」と判断し、部下に呼びかけます。「いま、部長からこんな命令を受けたんだけど、僕、よくわかんないんだよね。みんなで考えてみてよ。」新しい業務について自分自身の方向性は持ちながら、あえてわからないふりをして、部下を思考の森に誘い込みます。
部下を巻き込んで考えさせるときは、徹底して聞き役に回って下さい。議論の方向が望ましくない方に振れたら、じっと見ていてください。部下の中から方向転換する意見が出てくるはずです。それが出てこなければ、適切な質問をして軌道修正を促します。なかなか忍耐力のいる役回りですが、聞き役に徹しないと部下の考える力は育ちません。
もちろん、考えることだけで仕事は完成しません。考えて決まったことを実行しなければなりません。分担を決めて実行させ、適宜、進捗状況をチェックすることも不可欠です。管理職の役割は、自分がしたいと思っていることを部下にしてもらうことです。この点を肝に銘じていただきたいと思います。
投稿者プロフィール

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法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール
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