先日、ある食品製造会社の人事部長と話をしていたとき、「わが社は強い組織を目指しています」という発言がありました。私は、「具体的にどのような組織を考えておられるのですか」と尋ねました。すると、「いま、社内で検討しているところです」という答えが返ってきました。
会社は、しばしばスローガンを掲げます。強い組織というのも、一つのスローガンです。風通しの良い組織にしようとか、コミュニケーションを良くしようというのもスローガンです。
社員がわかりやすい言葉で目標を示すのは大切なことです。しかし、目標を掲げれば目指す状態が達成できるかというと、そう簡単ではありません。目標を掲げるのは、問題が発生しているからだと言うこともできます。
スローガンを出したとき、会社は、どういう状態になったらそのスローガンが達成できたと判断するのかを同時に示す必要があります。そうしなければ、従業員は具体的な行動を取ることができません。
さて、冒頭に述べた「強い組織」です。どういう状態になったら「強い組織になった」と言えるのでしょうか。
会社では、日々さまざまなことが起こっています。予期しないことの連続が企業経営と言っても過言ではありません。強い組織とは、何が起こっても対応できる組織だと思います。変化に対応できる組織になるには、横の連携が不可欠です。何か起こったときに助け合えなければ、組織は力を発揮することができません。助け合うには、ふだんからお互いの仕事がわかっていることが必要です。何かあったら代わって担当してくれる仲間がいれば、安心して異常事態に打ち込むことができます。
逆説的な言い方になりますが、強い組織とはメンバーが弱音を吐ける組織だと思います。仕事をしていて苦しい状態になったとき、「助けてください」と言える組織です。最近の日本企業では、「たいへんなんです。助けてください!」と言えない雰囲気があります。一人で頑張ってしまうので、メンタル不全に陥ってしまうのです。
組織は、人と人との連携でできあがっています。チームスポーツの練習では、何度も何度も連携を確認し、試合で起こる不測の事態に備えます。仕事は、一人でするものではありません。他の人に助けられながら成し遂げていくものです。
「強い組織」という言葉から、こんなことを考えました。
投稿者プロフィール

-
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール
最新の投稿
再び100エッセー2016.04.04143 映画『マイ・インターン』に学ぶ高齢期の働き方(下)
再び100エッセー2016.04.03142 映画『マイ・インターン』に学ぶ高齢期の働き方(中)
再び100エッセー2016.04.02141 映画『マイ・インターン』に学ぶ高齢期の働き方(上)
再び100エッセー2016.04.01140 情報の真偽を見極める眼を育てる