138 私たちは時間制約のもとで生きている

 予算制約と時間制約は、経済学でよく使われる概念です。私たちは、お金と時間という限られた資源を持っており、それを何にどう配分するかという意思決定をしながら生きています。使っても使ってもなくならないような資産を持っていれば、予算制約からは解放されますが、そういう人は例外的です。大多数の人は、手持ちのお金を何に使うか、頭を悩ませます。

 

 

 時間制約は、全員に課せられている制約条件です。1日は24時間しかありません。お金を使えば、自分の代わりに家事をしてもらうとか調べ物をしてもらうという形で時間制約をある程度緩和することができますが、1日を30時間にすることはできません。

 

 

時間をどう使うか

 

 限られた時間をどう使うかという課題は、大学生にも突きつけられています。しかし、この点を真剣に考えている学生はあまり多くないように見受けられます。例えば、出席予定だった講義が突然休講になったとします。90分という時間をどう使うかは、各人に任されています。ある学生は、友人とのおしゃべりに時間を費やすかもしれません。別の学生は、その科目について気になっていたところを調べるために図書館で時間を過ごすかもしれません。あるいは、スマートフォンでゲームに興じる学生がいるかもしれません。読みかけの本を読む学生がいるかもしれません。時間の使い方は自由です。これは良くて、これはダメというものではありません。しかし、大切な資源をどう使うかという意識は持って欲しいと思います。

 

 

考えることに時間を使う

 

 スマートフォンを見ているときの脳の血流量と本を読んでいるときの血流量を比較した研究があります。それを見ると、スマートフォンを見ているときの方が血流量は格段に低いことがわかります。つまり、スマートフォンを見ているときは、脳があまり動いていないのです。これは、私の体験からも納得できることです。一日の仕事が終わって自宅に帰るとき、本当に疲れていると本を読む元気が出てきません。でも、スマートフォンなら見ることができます。

 

 本を読むときは、自分の知識や経験を総動員して、文字で書かれている情景を思い浮かべようとします。ドイツのベルリンを舞台にした小説であれば、以前、自分が行ったことのあるベルリンの風景を思い出しながら読み進めます。脳のいろいろな部分に記憶されていることを使って、著者が描いていることを理解しようとします。読書は、相当なエネルギーを必要とする行為です。だから、疲れているときは、本を読む元気が湧いてこないのだと思います。

 

 本を読むことは考えることです。考えることで脳は鍛えられ、発想の豊かさを発揮するようになります。目の前の時間をどう使うかの積み重ねが将来の自分をつくっていくことを学生に繰り返し伝えていきたいと思います。

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール