景気の動向が気になる今日この頃です。株価が1万円を超えたと聞くと、株を持っていなくても少し明るい気分になりますね
政府の経済観測は、最悪期を抜け出したという判断ですが、エコノミストの中には「まだまだ、二番底、三番底がある」と言っている人もたくさんいます。
景気は「気のもの」です。多くの人が「まだ悪くなる」と思えば悪くなるし、「もう大丈夫だ」と思えば本当に大丈夫になります
経済学に「合成の誤謬(ごびゅう)」という言い方があります。家計や企業といった経済主体が、それぞれの観点から最適な行動をとったとき、それを足し合わせた全体経済は決して最適にはならないことを表します。
企業は、売上が落ちれば、それに合わせてコストを下げようとします。コストの一部は人件費ですから、人員削減を行います。すると失業者が増えます。失業者は購買力(ものを買う力)が低いですから、ますますものが売れなくなります。すると、企業はコスト削減のために人を減らして………まさに悪循環ですね
このような悪循環に陥るのを防ぐのが政府の財政政策です。道路を造ったり、橋を架けたりして仕事を作り出し、失業していた人たちが給料をもらえるような状態にすれば購買力が上がります。購買力が上がれば、ものが売れるようになるので、企業は人を雇って財・サービスの需要増に対応しようとします。こうして、よい循環が生まれることが期待されています。
この時に重要なのが、人々の持つ将来見通しです。「これからは良くなる」と思えば、働いて手に入れたお金を消費にまわすでしょうが、「悪くなるかもしれない」と思えば消費を低く抑えて、できるだけ貯金しようとします。貯金されたお金は、銀行内に止まっている限り、価値を生み出しません。企業が借りて、新しい機械を買ったり、研究開発のためにつぎ込んだりして新しい需要を喚起すれば、景気の上昇に寄与します
先行き不透明なとき、私たちは臆病になります。もっと悪くなるかもしれないことを予測して、それに備えようとします。これでは、景気はいつまで経ってもよくなりません。
景気対策は、政府だけの仕事だと考えない方がいいと思います。私たちにできる景気対策があります。それは、貯蓄の1%を自分の将来のために投資することです。100万円の貯金がある人なら1万円、200万円貯金があれば2万円です。わずかな金額ですが、日本全体でこれが起これば相当な金額になります
自分に投資するとは、本を買って読む、講演会や研修会に参加する、エステティックでお肌の手入れをするなど、自分自身の将来につながることなら何でもいいのです。堅苦しく考える必要はありません
真剣な行動は当事者意識から生まれます。何をすることが景気の回復につながるのか、そのために自分には何ができるのか―政治任せになるのではなく、一国民としてできることを一つ一つ実践していく必要があると思います
投稿者プロフィール

-
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール
最新の投稿
再び100エッセー2016.04.04143 映画『マイ・インターン』に学ぶ高齢期の働き方(下)
再び100エッセー2016.04.03142 映画『マイ・インターン』に学ぶ高齢期の働き方(中)
再び100エッセー2016.04.02141 映画『マイ・インターン』に学ぶ高齢期の働き方(上)
再び100エッセー2016.04.01140 情報の真偽を見極める眼を育てる