雇用情勢が悪化しています
昨日、発表された5月の完全失業率は5.2%になり、4月に比べて0.2ポイント悪化しました。
有効求人倍率も0.44となり、統計を取り始めて最低の水準に落ち込みました。
雇用関係の指標は、遅れて影響が現れると言われています。景気が悪くなっても直ちに悪化することはないけれども、景気が回復局面に入っても一定期間、悪化を続けます。政府の景気判断は、下落に歯止めがかかったとなっていますが、雇用に関しては、あと数カ月、悪い数字が続くと予想されます
企業は、売上が落ちてくるとコストを下げて対応しようとします。人件費はコストの一部ですから、当然、賃金削減が経営者の頭をよぎります。
賃金は、確かにコストです。しかし、将来に向かっての投資という側面もあります。コストの面を強調すれば、安ければ安いほど望ましいということになります。他方、投資の面を強調すれば、優秀な人材を確保して育てるには、他社に取られないだけの賃金を支払う必要があります
一般的に言って、賃金が低いと優秀な人材は集まってきません。低い賃金の会社には「それなりの人材」しかいないのが普通です。
企業の競争力は、他社とは違う製品・サービスを適正な価格で提供できるか否かにかかっています。そして、競争力を維持するには、「他の追随を許さない」ことが重要です。
このような製品・サービスを生み出すのは従業員の力です。他人の作ったデータではなく、自分の足で稼いだデータを使って、他社が気づいていない市場を見つけ出して仕掛けていく人材が求められています
このような人材を雇おうとすると、ある程度の金額を支払わなければなりません。「それは無理だ」というのであれば、他社との差別化によって競争力をつけることはあきらめざるを得ません。いつまで経っても、コスト競争の呪縛から逃れられないことになります。
ここで経営者の覚悟が試されます。高い賃金で優秀な人材を雇うのは「投資」です。投資には、うまくいかなかったときに損失が発生するかもしれないというリスクが伴います。しかし、このリスクをおそれていては、企業の発展はありません。
賃金をコストと見るのか、投資と見るのか?経営者の見識が問われる質問です
投稿者プロフィール

-
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール
最新の投稿
再び100エッセー2016.04.04143 映画『マイ・インターン』に学ぶ高齢期の働き方(下)
再び100エッセー2016.04.03142 映画『マイ・インターン』に学ぶ高齢期の働き方(中)
再び100エッセー2016.04.02141 映画『マイ・インターン』に学ぶ高齢期の働き方(上)
再び100エッセー2016.04.01140 情報の真偽を見極める眼を育てる