朝晩は、秋の風を強く感じるようになりましたね。風邪を引いてしまった方はおられませんか?
私は、クロアチアから帰ってきて、慌ただしい日々を送っていました。光陰矢のごとし―前回のブログから20日も経ってしまいました
今日は、先日、ある会社の社長とお話ししたときに出た話題について書きたいと思います。話のテーマは、人材育成でした。「人を育てようと思うのに、どうもうまくいかない」という社長の問題意識に対して、「教え方だけではなく、教えられ方も教えないといけない時代になったのだと思います」とお答えしました
教え方については、昔から様々な議論があり、たくさんの手法が開発されています。それらの中で私が大切にしているのは対話法です。
学生に何か質問したとき、私が想定していたのとは違う答え方をする場合があります。そのようなとき、頭ごなしに「君は間違っている」と言うのではなく、いったんその回答を受け止めた上で、質問を重ねていきます
「確かに、そういう考え方もあるね。では、こういう場合はどうだろう?」「こうなったら、どうなる?」といった質問をしていくと、その学生は徐々に自分の間違いに気づき、本当の答えに到達します。自ら気づくことを大切にするのが対話法の神髄だと思います
対話法を実践するには、精神的、時間的余裕が必要です。私も常に余裕がある状態だとは限りませんから、いきなり「そうではなくて、これ!」と言ってしまうことがあります。日々、反省の繰り返しです
教えられ方を教えることが、1990年代以降、大切になっていると思います。理由は二つあります。一つは、少子化の影響です。子供の数が減ることは、一人当たりの子供にかける大人の時間が増えることにつながります。幼児の頃から様々な遊具を与えられ、学校では手取り足取り教えられて育った若者は、わかりやすく教えてもらうことが当たり前になっています。挙げ句の果ては、「自分がわからないのは教える側の教え方が悪いからだ」と責任転嫁してしまいます。企業で仕事を教えてもらうには守るべきルールがあることを改めて教えなければならなくなっています
教えられ方を教えなければならないもう一つの理由は、先輩との年齢差が開きすぎていることです。1990年代以降、多くの日本企業は、正社員の採用を極力抑えてきました。その結果、数年ごとに新人が入ってくるという状態ではなくなっています。「10年ぶりに新人が入ってきた」という職場は珍しくありません
何かを教えてもらうとき、教える側は「わからなかったらいつでも聞くように」と指示します。年齢が近ければ気楽に聞けるのですが、10歳も離れてしまうと「こんなことを聞いてもいいのだろうか?」という躊躇が先に立ってしまい、わからないことがあってもなかなか聞けません。聞き方も大切ですね。「教えてやろう」と思わせるような質問の仕方や言葉遣いを身につけておいた方がだんぜん得です
人材育成は、教える側と教えられる側の波長がうまく合ったときに最大の効果を発揮します。同じ時間を使うのであれば、効果の高い方法をお互いに知っておいた方がいいですね。
教えられ方の極意については、次回のブログで考えてみたいと思います
投稿者プロフィール

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法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール
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