ボールがたくさん飛んでくる!?

前々回のブログで、ボールがどこにあるのか従業員はわかっているのかという問題提起をしました。

この話をある労働組合の委員長にしたところ、「ボールは一つではなくて、一度にたくさん飛んでくることもあるのではないか」という指摘をいただきました。確かに、最近の日本企業の内部では、そういう状況が起こっているなと思います

ここ15年の間に正社員の数が減り、派遣社員や契約社員といった有期雇用の人たちが増えてきました。コンプライアンスや企業の社会的責任を問う声が強くなり、守らなければならない法令が増えました

 

仕事が複雑化しているのに、それを担う正社員の数が減ったということは、一人当たりの負荷が高まっていることに他なりません。冒頭で紹介した労組委員長の言葉は、まさにこの状況を表現しています。

 

取り組まなければならない課題が一度に押し寄せてきて、しかも特定の人に集中してしまう状態が至るところで見られます。当事者にしてみれば、ボールが一度にたくさん飛んでくるように感じますどれから処理すべきか、瞬時に判断しなければなりません。判断業務を担うべき管理職も、一プレーヤーとしてボールの処理に追われていますから、 指示を仰ごうにも仰げる状況ではないことがしばしば起こります。結局、担当者が孤軍奮闘することになります

 

ITの発達によって、情報量が飛躍的に増加し、一気にいろいろな情報が流れ込んでくるようになったことも仕事を複雑にしています。時として、情報の洪水に翻弄されることがあります。

 

洪水の中で泳ぐのは至難の業です。相当な力量が必要です。でも、若手社員たちは、その力量を養う余裕を与えられることなく、いきなり洪水の中に放り込まれます。おぼれてしまってメンタルヘルスに問題を抱える人が出るのは無理もないなと思います

 

では、どうすればいいのでしょうか?

ボールが一気に何個も飛んでくる状態は、ゲートキーパーである管理職がしっかり受け止めて、是正するしかありません。有期雇用の人たちも含めた情報の共有が必要です。朝礼や夕礼をしっかりやることによって、いま自分たちが追いかけなければならないボールは何かを明確にし、各人の役割を確認し合うことです

情報の洪水の中で泳ぎ切る力量を身につけるには、時間がかかります。人材育成に打ち出の小槌はありません。地道に一歩一歩積み上げていくことの重要性を上司や先輩が再確認し、部下や後輩にこまめに声をかけて成長を促すしかありません。促成栽培された人材は、一つのことはできても応用が利きません。いつもとは異なる状況に置かれると、何をしていいかわからなくなり、結局役に立たなくなります。場数を踏ませながらゆっくり育てていくしかないと思います。

 

人は仕事をすることによって成長します。でも、負荷のかかりすぎる仕事は人を壊してしまいます。成長を実感できるような仕事のしかたを大切にしたいですね

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール