ものには適正な値段がある

低価格商品が話題になっています

 

イオンがサントリーに委託してプライベートブランドのビール(第三のビール)をつくり、今月24日からジャスコやサティで販売するという記事が、22日の日本経済新聞朝刊に出ていました。販売価格は100円ですセブン&アイも同様の商品を販売予定であることが書かれていました。

 

アルコール飲料には酒税がかかっています。第三のビールは税金が安いとはいえ、350ml缶で28円の税金になります。100円から税金を抜いた金額は72円ですね。この金額で販売者も生産者も流通業者も利益を出すのはたいへんだと思います

 

不況で、ものが売れない時代だから、価格を下げて一定の販売量を確保しようとするのは普通の企業行動です。でも、みんながこのような行動をとっていくと、いつまで経っても景気は回復しないのではないかと思ってしまいます。

 

ビール会社の人が言っていました。「いちばん儲かるのは、ノン・アルコール・ビールなんです

なぜだと思われますか?

税金を払わなくていいからです。ノン・アルコール・ビールの価格は120?130円で安定しています。この金額が、まるまる売上になります

 

キリンビールがアルコール分0.00%のノン・アルコール・ビールを発売しました。自動車を運転しなければならないのでアルコールを飲むわけにはいかないが、かといって食事の時にお茶ではさびしい―このように考える人たちに、ビールテイストの飲料は支持されています。

 

ものが売れないから価格を下げる。同業者が下げたからウチも下げる。これでは、問題の解決にはなりません。大切なのは、高い値段を出してでも買いたいと思ってくれるような商品やサービスを開発することです。キリンビールが開発したノン・アルコール・ビールは、その一例ですね

 

ものには適正な値段があります。本来1万円するものが5000円で売られていると、一時的に消費者は喜びます。でも、結果として、消費者の利益にはならない可能性があります。それは、そんな販売の仕方をする企業は存続できなくなるので、商品自体がなくなるからです。困るのは、結局、消費者です

 

私たちは、安いことがいいことだという単純な発想から、そろそろ脱却しないといけないと思います。消費者は、企業を育てる役割を担っています。私たちが本当に必要としている商品やサービスを提供してくれる企業には、ちゃんとした金額を払うことが当たり前になってほしいですね

 

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール