安心と信頼があるからこそ挑戦できる

前回、人事の勉強会を続けていることを書きました。今月の勉強会では、野球を例として組織のあり方が議論されました。

 

チームスポーツは、組織論が重要です。勝つためにメンバーは何をするのかが常に問われます。まさにチームワークが問題になります

 

私たちは、チームワークという言葉を何気なく使いますが、本当のチームワークとは何でしょうか?私は、互いにバックアップすることだと思います。

センターの前にフライが飛んだとき、突っ込んでいってノーバウンドで捕球してアウトにするのか、大事を取ってワンバウンドで押さえて単打にするのか、一瞬の判断が求められます。美技になるか、エラーになるかの瀬戸際ですね

 

向上心のある選手なら、リスクを冒してでもノーバウンドで取りにいこうとします。しかし、一つ間違えば長打になってしまいます。そのときに突っ込むか否かを決めるのは、本人の技術もさることながら、外野を守っている仲間への信頼です。

 

自分が突っ込んでいって仮に取れなくても、ライト(あるいはレフト)が必ずバックアップに来てくれているから3塁打にはならないという安心感です。これがなければ、無理なプレーはやめて無難に単打にして処理しようとします

 

会社の仕事も同じですね。できるかどうかわからないけれど挑戦してみようという従業員が「美技」を生み出し、会社の利益に貢献してくれます。挑戦できるのは、もし失敗しても職を失うことはないという安心感と、仲間が必ずフォローしてくれるという信頼感があるからです

 

前回も書きましたように、成果主義は部分最適を求めるしくみでした。自分の目の前の課題を成し遂げることを従業員に求める制度でした。仲間が悩んで\いるときや苦しんでいるときに手をさしのべ、一緒に考えて問題に立ち向かうことを評価の対象とはしない制度でした。

安心感や信頼感のない組織に挑戦は生まれません。日本企業がなぜかわからないけれども元気をなくし、衰退していったのは、ここに原因があると思います

 

安心感はぬるま湯体質を作り出し、イノベーションを阻害するという考え方があります。確かに、そのような行動をとる人もいるでしょう。しかし、適切な環境が与えられれば、人間は、成長したい、向上したいと思うものです。

 

ここ15年くらいの間、日本企業を襲った成果主義という嵐は、人間に対する正しい理解を持たない経営者や人事担当責任者が舵を握る企業の屋台骨を揺るがし、組織力を落としてしまいました。

でも、いまならまだ間に合います。安心と信頼が挑戦を生み、イノベーションを起こすことに私たちは気づき、従業員が果敢に挑戦する組織を取り戻す必要があります

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール