公的年金は保険

 公的年金は、社会保険の一つです。保険は危険分散のためのしくみですから、公的年金も危険分散の制度になります

公的年金がカバーする危険は、稼げなくなることです。高齢になってくると、身体に変調をきたしたり、新しい技術についていくことが難しくなったりして、十分な給料を得られなくなる危険性が高まります。この危険をみんなで補いあうのが公的年金です。

こう考えると、70歳を過ぎ80歳になっても第一線で働き、十分な給料を稼いでいる人への年金給付は必要な
いことになります
 

 保険の最も望ましい姿は、給付を受けないことです。自動車には事故に備えた保険がかけられていますが、この保険のお世話になるのは、事故にあったときです。できればそれは避けたいですね。つまり、保険のお世話にならないことが最も幸せな状態ということになります

 

 公的年金のしくみには、大きく分けて賦課方式と積立方式があります。日本の公的年金は、基本的に賦課方式です。現在働いている人たちが納めた掛け金が年金生活者への給付原資になっています。この方式は、働いている人たちがたくさんいて年金受給者が少ない状況では、問題なく機能します。2000年頃までの日本はほぼその状態でした。年金生活者一人を4人で支えていました。それが、少子化の急速な進行とともに3人で支える状態になり、将来的には2人を切るという予測がなされています

 この計算は、65歳以上の人たちが全員年金生活者になることを前提としたものです。実際には、65歳を過ぎて働き続けてる人たちが相当数存在するので、これほど劇的な数字にはならないと思われます。少子化は、世の中の働き手を少なくするので、働いて稼げなくなる危険性はむしろ減っていくと考えられます。働けるうちは働き続けるのが常態化するでしょう悠々自適の年金生活というのは夢物語になると思われます。

 

 「えー、そんなぁ…困る!」と言う方が多いと思います。でも、ここで考えていただきたい。少子化の責任は誰にあるのでしょうか?子供が産まれない社会になったのはなぜでしょうか?

 私がこの質問をすると、「政治が悪い」と答える方がいらっしゃいます。確かに政治に問題があります。では、政治家を選んだのは誰でしょうか?私たち国民ですね。つまり、子供が産まれない社会にしたのは、いま年金の掛け金を払っている私たちなのです。この点に気づくことが年金問題解決の第一歩です

 

 因果応報。子供が産まれない社会にしたツケは、65歳を過ぎ、70歳を過ぎても働き続けなければならないという形で私たちに回ってきます。そう考えると、賦課方式の公的年金制度はなかなか良くできたしくみだとも言えます。

 

 問題の責任を他人に転嫁するのではなく、そういう社会にしてしまった私たちの行動に目を向けるべきです。私たちが気づいて動かない限り、政府は何も解決してくれません。解決するのは、私たち一人一人であることを肝に銘じる必要があると思います
 

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール