仕事始め

明けましておめでとうございます!本年もどうぞよろしくお願い致します。

 

1月4日は仕事始めですね。今日から2010年の仕事が始まるという方も多いと思います。

私は、1984年から1997年まで教育職国家公務員をしていました。1990年代の半ばまで、仕事始めの日は、出勤するけれども仕事はしませんでした。新年のあいさつを交わし、少しアルコールも入って語り合う日でした。

 

そのような風習がいつの頃からか「けしからん」と言われ、仕事始めの日から仕事をするようになりました。私は、何かおかしいなと思いながら、この変化を見ていました

 

 

組織には文化があり、風習があります。民間企業だと「社風」とか「企業文化」という言葉が使われます。仕事始めの日に、仕事をせずに語り合うのは組織の文化であり、明日からの仕事に役立つ行事でした。書類を作ったり、会議をしたりといったことはしませんでしたが、お互いの人間性を知り、助け合って仕事をしていこうという雰囲気をつくるにはとても有効な時間でした。

 

にもかかわらず、公務員の働き方に対して過剰な批判がなされたことをきっかけにして、古き良き組織文化が消えてしまいました。仕事始めの日から働くようになった結果、住民サービスが向上し、私たちの生活がより豊かになったのなら良い変化だと言えます。でも、残念ながら実態は逆です。人間関係が希薄になり、メンタル不全で長期休職に追い込まれる人が公務員の職場でも目立っています

 

私たちは、いったい何を間違えたのでしょうか?

 

私は、信頼して任せ、長期の視点で良し悪しを判断する余裕をなくしたことが最大の問題だと思っています。目先の結果を細かくチェックしようとすると、単なる帳尻合わせになってしまいます。「少し間違えることはあるかもしれないけれど、最後はちゃんと目的を達成してくれるはずだ。それを信じて任せよう」―このような気持ちがないと人は育たないし、良い仕事もできません。

 

私たちの社会は、相手を信頼することで成り立っています。私たちが安心して自動車を運転できるのは、反対側から走ってくる車も交通ルールを守るだろうと信じているからです。公道を走っている車の1000台に1台でも交通ルールを守らない走り方をし始めると、危なくて自動車の運転なんてできなくなります

 

信頼は、信頼から生まれます。相手が自分を信じてくれていると思うから、自分も相手を信じて行動しないといけないと思います。仕事も同じです。それぞれの持ち場で、各人がちゃんとした仕事をすることで、社会の歯車がかみ合い、私たちの生活が維持されています。

 

私は、学生たちに「社会は労働の連鎖でできあがっている」という言い方をして、働くことの大切さを教えています。ひとりひとりの労働がつながることで、私たちの社会が維持されていることを知り、その連鎖のどの部分を自分は担うのかという視点で仕事を見てほしいと話します。もし、本来の役割を果たさない人が一人でも出てくると、社会のしくみはひずんでしまいます。最初は「何か変だな?」という程度で済むのですが、そのうちに、届くべき荷物が届かなくなったり、来るべき電車が来なくなったりします。

 

これから、日本社会の高齢化はどんどん進みます。これまで経験しなかったような問題が出てきます。それを賢く解決し、住みやすい社会を維持できるかどうかは、私たちひとりひとりの行動にかかっています。2010年代は、日本社会にとって、いろいろな意味で挑戦の連続になると思います。

 

この挑戦を正面から受け、日本社会の暮らしやすさを維持していく力は、信頼からしか生まれません。目先の帳尻合わせに一喜一憂するのではなく、5年後、10年後に実を結ぶことを信じて何をすべきかを考える―今日の仕事始めを、そんな日にしていただきたいと思います

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール