リスクという言葉をよく聞きます。
リスクというのは、一定の確率で発生する良くないことです。
リスクを管理するとは、発生するかもしれない悪い状況に対して事前に対処方法を検討し、必要な手を打っておくことです。
起こるかもしれないことに準備するわけですから、余計なコストがかかります。この点をわかっていない人が多いように思います
各地で大手スーパーが閉店になり、買い物をするところがなくなって困っているというニュースが流れます。マスコミの論調をみると、「大手スーパーが出てきたために地元の商店が立ちゆかなくなり、多くの店が閉店してしまった。地元の店をつぶしておきながら、大手スーパー自体が撤退するのはけしからん」というものが多いように思います
このような報道に接すると、私は変だなと思います。地元の商店を廃業に追い込んだのは、大手スーパーではないと考えるからです。地元の商店をつぶしたのは、地元のお店で買い物をしなくなった消費者です。
どこで買い物をするのかを決めるのは、大手スーパーではなく消費者です。単に安いからという理由で、大手のスーパーだけで買い物をするという行動を消費者がとれば、地元の店はつぶれます。自明のことですね。大手スーパーが撤退すると買い物の場がなくなるから、地元の店にも存続してもらうために、少々高くても地元の商店で一定量の買い物をしようという行動をとるのがリスク管理です
ヨーロッパにも大型のショッピングモールがたくさんあり、多くのお客さんを集めています。ショッピングモールができると地元の商店がつぶれるかというとそうではありません。近所の商店もちゃんと営業を続けています。
ヨーロッパの人たちは、少し高いけれど地元のお店を守るために地元の店でも買い物をしています。だから、大手スーパーと地元の商店が共存できるのです。さまざまな歴史の変動を経験し、支配者が何度も変わる過去を持っているだけに、一カ所に集中させるのは危険だという感覚が彼らの中にはあるようです
リスク管理は政府に任せておけばいいというものではありません。私たちも、日常生活の中でリスク管理を求められています。
今からでも遅くありません。地元の商店が存続できるように、近くの商店で買い物をしようではありませんか。欲しいものがなければ、お店の人にそれを話しましょう。そして、品揃えを充実してもらいましょう。お店を育てるのは、他でもない私たち消費者なのですから…
投稿者プロフィール

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法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール
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