民間準拠の危うさ

 前回、公務員の評価制度について書きましたが、その中で、人事院での研究会のことに触れました。そのときの議論を、一部ご紹介したいと思います。

 

 議論は、民間準拠をめぐって展開されました。

 ここ10年くらい、民間準拠という名の下に、成果・業績を評価して、その結果を給与に反映させるという改革が進んでいます。この考え方の前提になっているのは、民間企業も公務員も働き方は同じという点です

 でも、それを前提としていいのでしょうか?

 

 

 もともと公務員の方々は、民間企業にできないこと、民間に任せていたら誰もしないであろうことを担当しているはずです。それが「公務労働」というものです。

 

 民間企業では、前例にないことに挑戦し、首尾良くやり遂げて企業業績に貢献すれば「よくやった!」と褒めてもらえます。公務員の世界ではどうでしょうか?

 法律や条令に書いていないこと、あるいは法令や条例が古くなって実態に合わなくなっている状況の中で、国民や住民のためになるからと判断して実行した場合、本当に「よくやった!」と言ってもらえるのでしょうか?

 

 そこは、とても微妙です。国民や住民のためになるとはいえ、法令や条例に書いていないことや反していることをしたら、褒められるどころか罰せられてしまいかねません。「法律や条令を変えてから実行するものだ」と言われるでしょう

 

 ここまでお読みいただければ、成果主義的な人事制度を導入した民間企業で求められてきた働き方と、公務員に求められる働き方が異なることは自明ですね。働き方が異なるのに「民間準拠」を掲げると、結果はおかしいものになってしまいます。

 

 この点も人事院の方々はよくわかっておられました。しかし、「官邸の指示だから」というひと言で、彼らの良識は押しつぶされてしまいました。

 

 一つの流れができてしまうと、だれもそれを押しとどめられなくなる―先の大戦に突入していった頃と何も変わっていないのではないかと考えさせられる出来事でした

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
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