利益三分主義

 先日、大阪で行われたシンポジウムでサントリーの方とご一緒しました。そこで聞いたのが表題にある「利益三分主義」です。

 

 三分とは、上がった利益を、お客様、従業員、将来への投資の3つに分けるという意味です。利益配分の対象として株主が入っていないのがサントリーらしくていいなと思いました

 

 サントリーは、非上場のユニークな会社です。創業者が提唱した「やってみなはれ!」の精神が今も連綿と生きていて、おもしろいことをやってみようという企業風土があるそうです。

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 1998年橋本政権下で始まった「金融ビッグバン」以来、上場企業は株主の方を向いて経営をせざるをえない状況に置かれました。四半期ごとに決算報告することを求められ、無理やり利益をたたき出す行動も散見されます

 

 「四半期ごとに企業の財務状況を公開するのは株主に対する当然の義務だ」と言われ、業種に関わりなく3カ月ごとの情報開示をしています。私たちは、それがグローバル・スタンダードだと教えられてきたのですが、実は、アメリカン・スタンダードでした。橋本政権が始めた金融ビッグバンは、結局、日本の株式市場の仕組みを「アメリカ化」することに他ならなかったと言えます

 

 金融業では四半期決算はそれなりに意味があります。しかし、製造業で四半期ごとの業績を求められると、実状に合わないと感じる企業が大半です。

 

 製造業の中には、製薬会社のように10年単位で新薬の開発に取り組んでいるところがあります。あるいは、清涼飲料メーカーのように、季節によって売上(その結果としての利益)が大きく変動するところもあります。金融業とは異なる性格を持った製造メーカーに、金融業で使われている指標を無理やり当てはめようとしたのが金融ビッグバンの本質だったと思います

 

 この仕組みが、日本の製造業の競争力を高める方向に働いたのなら何も言うことはありません。しかし、現実は、経営陣が利益を出すために変な帳尻合わせをしたり、本来ならばあと半年検討を重ねてから\出した方がいい新製品を無理やり早く出したり、弊害の方が目立っています。

 

 日本の競争力は、衆知を集めて不可能を可能に変えていく力にあります。息の長い開発期間を必要とする製品にこそ、他国にはまねできない日本の強みがあります。

 

 サントリーは、非上場であるがゆえに、自由な発想で働くことを社員に求めています。目先の利益を追う必要がない点は、結果として企業の競争力向上につながっています

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 制度は人間が作るものです。人間は過ちを犯しますが、それに気づいたとき、速やかに修正するのも人間のいい点です。事実を冷静に観察し、何が日本の競争力を高めることにつながるのかを見極めて、制度を精査したとき、変えるべきものはたくさんあります。

 

 サントリーの方のお話を聴きながら、「現在の日本の株式市場は、日本企業の競争力を高める上で役に立っていないのではないか。だったら、競争力向上に資する市場に変えていく必要があるな」と思いました

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール