本を読むことは自分を読むことだと言われます。同じ本を読んでも、人によって感じ方が違います
自分としては「おもしろい」「大事だ」と感じたことが、他の人にとってはそうでもない場合が良くあります。読書会に参加したことのある方は、このような経験をされたことがあるでしょう。
ある程度の時間をおいて同じ本を読むと、感じ方が違うことが良くあります。書かれたものですから、内容は全く変わっていません。でも、読む側の自分が変わっているので、感じることや考えることが違います
数日前から、井上靖の『孔子』を読み始めました。10年以上前に読んだ本ですが、久しぶりに背表紙を見たとき、もう一度手に取ってみようと思いました。
『孔子』は井上靖が80歳を過ぎて書いた最後の長編小説です。雑誌『新潮』に1987年から89年にかけて連載されたもので、89年9月に新潮社から単行本として刊行されました。私が手にしているのは文庫本ですが、なかなか読みごたえのある小説です
この本は、孔子の生涯を描いた伝記小説ではありません。『論語』が形成されていく過程を綴ったものです。あるきっかけで孔子の一団と行動を共にすることになった主人公が、孔子やその弟子の様子、言動、議論を語るという形式がとられています。
10年の時を隔てて同じ本を読むと、こんなにも感じ方が違うものかと驚いてしまします。10年前の自分と今の自分は違います。多くのことを経験してきましたし、たくさんのことを考えてきました。本を読むときは、自分の知識や経験を総動員しますから、時間をおいて読むと感じ方が異なるのは当然ですね
『論語』には人間の知恵が詰まっています。約2500年前に一人の哲人が語った言葉が現代でも十分通用するのを見ると、人間の基本は何も変わっていないのだなと思います。自らの思慮の浅さを痛感させられる日々が当分続きそうです
投稿者プロフィール

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法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール
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