時々、クロアチア語の通訳をすることがあります。最近は、日常的にクロアチア語を読んでいないので、ひと頃よりも力が落ちています。振り返ってみると、30歳代前半がクロアチア語能力のピークだったと思います
言葉は、毎日使っていないと忘れます。微妙な言い回しやニュアンスを伝えるには、多様な表現方法を知っている必要があります。それを自分の中に取り込むには、本を読んだり、ラジオやテレビでニュース番組や討論番組を観たりする方法が有効です。また、聞き手の理解の体系に合わせて話を組み立てることも重要です。
30歳代前半までは、クロアチア語の本や論文を毎日読んでいましたし、クロアチア滞在中は毎日欠かさずニュースを観ていました。それもあって、クロアチアの人たちが持っている理解の体系も私の中にできあがっていました
研究対象がクロアチアから日本に移っていくにつれて、クロアチア語を読む時間が少なくなりました。それと並行して、クロアチア語の能力も落ちていきました。時間には限りがありますから、これも致し方のないことだと受け入れました。
それでも、クロアチア語の通訳の仕事がきます。クロアチア語の通訳は、比較的気楽です。というのは、クロアチア語を知っている人があまりいないからです。英語ですと理解できる人がたくさんいますから、一文一文をていねいに訳していかないと「あっ、はしょった!」とか「ちょっと違うんじゃない?」と思われてしまいます
その点、クロアチア語については、わかる人がほとんどいない中で通訳する場合が多いので、3回くらいのやりとりの中で言いたいことを伝えるという操作が許されます。話の筋が通っていれば、聞き手も問題なく受け入れてくれます。
テレビなどを観ていると、一文ずつ区切って通訳しているのを目にしますが、聞き手にはかえってわかりにくくなります。それは、外国人の話の進め方と私たちが慣れ親しんでいる話の進め方が少し違うからです。2?3の文を述べてから通訳してもらうと、通訳者が私たちの理解の構造に合わせた組み立て方に修正してくれるので、わかりやすくなるのです
相手の理解の順序に合わせて話を組み立てられるようになるには、相手のことがわかっていなければなりません。時として、瞬時にそれを求められることがあります。初めて会った人との会話がそうです。
初対面の相手に対しても、ある程度相手の理解の体系を考慮しながら話せるようになるには、場数を踏んで、訓練を積み重なるしかないですね
投稿者プロフィール

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法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール
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