再び外国語ネタです。
1980年代半ば、広島の自動車会社マツダがデトロイトの郊外フラットロックでカペラの生産を始めた頃の話です。カペラというと、懐かしんで下さる方もあると思います。
当時、フォードがマツダに資本参加していましたから、フォードが使わなくなった工場の一角に生産設備を入れ、アメリカ人を雇って創業することになりました。そこで問題になったのが、雇い入れた人たちの訓練です
自動車は、2万から3万点の部品を組み付けて作る製品です。人の労働がとても重要です。マツダ本社で培ったノウハウを現地の人に伝えて、マツダ車に恥じない品質を出してもらわないといけません。
生産の指導をするのは、広島工場で働いている従業員たちです。広島弁しか話したことがない人たちに、英語を使って現地のアメリカ人を指導するなんてことができるのだろうかと、相当悩んだそうです
結局、基本的な単語を60だけ覚えてもらって現地に派遣しました。派遣された現場の熟練工たちは、立派に役目を果たし、日本と同じ品質のカペラができるようになりました
製造現場は、実際にものがあります。やってみせればいいのです。have, put, take, moveといった動詞のあとにものを指さしながらthisと言えば、十分通じるとのことでした。thの発音なんて気にしなくてもいいのです。ジスで十分です
製造現場のもう一ついいところは、現地の人たちに尊敬してもらえることだそうです。自分たちでどうやってもできなかったことが、日本から派遣されているオジさんがくると、いとも簡単にやってしまう。こいつはすごい奴だ、となるそうです。尊敬を勝ち取れば、あとはうまくいきます。それは、学ぶ姿勢ができるからです。
このエピソードからみなさんにお伝えしたいのは、1000も2000も単語を知らなくても、たぶん200語くらいで十分コミュニケーションはできるという点です。そのものぴったりの単語を知らなければ説明すればいいのです。例えば、車庫のことをgarageと言いますが、この単語を知らない場合、「車が寝る場所」と言えばわかってくれます
外国語を話せるようになるには、自分の中にどれだけ多くの表現を持っているかが決め手です。そこで、みなさんへのアドバイスです。一日に一文でいいですから、外国語で文を作ってみてください。
何かの文章から抜いてきてもいいのですが、自分の表現になっていないと、いざというときに使えませんから、自分でつくった方がいいですね。今日起こった出来事、見たもの、感じたこと何でもいいですから表現するのです。それを書きためていけば、3カ月ちょっとで100になります。それくらいの表現が頭の中に入っていれば、何とかなります。
以前、自分の中に話すものを持っていないとダメだという文を書きました。上記の方法で、自分の中に表現するものをためてみてください。きっと自信がつくと思います
投稿者プロフィール

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法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール
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