福島原発事故と諸外国の対応

 東北関東大震災から2週間が経ちました。被災された方々に必要最低限の物資が届き始めたとはいえ、まだまだ不十分だと報道されています。今回の震災の大きさと日本社会への影響の深さをあらためて感じています。

 福島第一原子力発電所の事故の深刻さが報道されるようになって以降、各国の大使館がその機能を東京から関西や広島に移す動きが出ています。ルフトハンザ航空やアリタリア航空も昨日まで成田空港への乗り入れを中止していました。

 アメリカ政府は、80㎞圏の外に避難するように自国民に呼びかけたり、在日米軍が横田基地や横須賀基地の日本人従業員にヨウ素剤を配布したり、といった行動をとっています。

 

 本当にそんなに危ないのか?と思ってしまいます。あくまでも私の推測ですが、諸外国の政府は次のように考えているのではないかと思います。「原子力発電所があのような状況になったら、事態を収拾できるはずがない。原子炉の暴走を抑えられないのだから、できるだけ早く遠くに避難するしか打つ手はないだろう。」

 

 しかし、いろいろ問題が発生しているとはいえ、今のところ、事態は悪くなっていません。汚染物質が継続的に排出される状況は、何とか阻止されています。これは、第一線で命をかけて事態収拾にあたっている方々の努力の賜だと思います。

 

 1991年の湾岸戦争後、ペルシャ湾に敷設された機雷を除去するために、日本政府も遅れて参加しました。これは、当時の自衛隊の幹部から伺ったお話です。自衛隊の掃海艇が現場に到着したとき、各国海軍によって掃海範囲の線引きができており、とても難しい海域だけ残っていました。海上自衛隊は、その難しい海域(他国の海軍がさじを投げた海域)を担当せざるを得なかったそうです。

 

 どの国の海軍も、日本の自衛隊にできるはずがないと思っていたそうですが、その予測を見事に跳ね返して、担当海域の掃海を完璧に完了しました。これをみた他国の海軍は、日本の海上自衛隊に最高の賛辞を贈ったそうです。この事実は、日本のマスコミで報道されなかったため、日本国民が広く知ることにはなりませんでした。

 

 今回の原発事故への対応は、20年前の出来事を思い起こさせます。諸外国が「不可能だ」「無理だ」と考えていることを見事にやってのける日本人の技量の高さです。

 

 不可能を可能にするのは、現状に対する正しい認識とリスクを負う胆力、そして使命感です。事故対応にあたっている人たちの安全を祈りながら、不可能を可能にする現場の力を信じたいと思います。

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
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