私は、プロフェッショナル意識を「自分の仕事に誇りを持ち、仕事の結果に責任を持てる人」と定義しています。高度な能力を持っている限られた人ではなく、自分の担当している仕事に愚直に取り組んでいる人には、プロ意識があると思います
タクシー運転手は、人や荷物を安全に運ぶプロです。その対価としてお金(料金)を取ります
日本のタクシー運転手を見ていて気になることがいくつかありますが、最大の疑問は、お客様がトランクに荷物を入れるときに手伝わないことです。私は、ヨーロッパを旅することがよくありますが、タクシー運転手は、必ず、荷物の積み卸しを手伝ってくれます。
これは、お客様へのサービスという面だけでなく、自分の車で運ぼうとしているものがどのような重さ、大きさであり、トランクのどの場所に積まれているかを確認することだと思います。荷物を確認しているからこそ、安心して運転できるのであり、安全にお客様を目的地までお送りできるのです
タクシーは、小泉政権下の規制緩和の中で大幅に台数が増えました。その結果、一台あたりの売上が減少しています。タクシー運転手たちに言わせれば、「こんな安い給料しかもらっていないのに、荷物の積み卸しのサービスなんてできない」ということなのでしょうか。仮にそうだとしても、彼らのプロ意識の欠如には、目を覆うものがあります
アメリカでは、チップが制度化されています。レストランなどで働く人たちが会社から受け取る給料は低く設定されています。お客様から料金の10~15%のチップをもらうことによって、ようやく普通の給与水準になるように設計されています。お金をちらつかせて水準の高いサービスをするように従業員を誘導しているようで、私はあまり好きではありません。本来は、レストランがしっかりした給与を出すことで、従業員全体のサービス水準を上げるべきだと思います。少なくとも日本はそうしてきました。
しかし、タクシー運転手のプロ意識の欠如とサービス水準の低下を見ると、彼らにはチップの仕組みを入れた方が良いのではないかと思ってしまいます。お金で釣らなければならないほど意識が低下してしまった人たちに、私たちは自分の命を預けているのです。
プロの仕事には、それなりの対価を払わなければなりません。プロ意識を持ったタクシー運転手を育てるには、私たち消費者が、いい仕事にはちゃんとした料金を払うという行動をとることが必要なのかなと思います
投稿者プロフィール

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法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール
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