明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します
お正月気分が年々小さくなっていると言われています。私もそう感じます
私が子供だった頃(ざっと50年前ですが)、正月三が日に開いているお店はありませんでした。初売りや初荷は1月4日以降でした。「松の内」という言葉も生きていました。正月の松飾りのある間(通常は元日から七日間)だから、○○をしてはいけないとかしなければいけないと、親から言われたものです。
今や初売りは1月1日ですし、12月31日に開いていたコンビニが1月1日も同じように開いています。月の終わりが来て、次の日は月初めになるような感じで、12月31日から1月1日になっています。お正月気分がなくなるのも当然ですね。
でも、これでいいのかなと疑問に思うことがあります。私たちは、自然の中で生きています。都市部で生活しているとあまり感じませんが、田舎に行くと自然の優しさと厳しさを目の当たりにします。秋になれば多くの恵みをもたらしてくれるのが自然の優しさならば、大雪を降らせて数百台もの自動車を動けなくしてしまうのは自然の厳しさです
日本の伝統文化は、季節感を大切にしてきました。雨水や立春といった二十四節気、様々な節句は季節感あふれる習慣ですしかし、グローバル化が急速に進む現在、日本的なものが軽視される傾向が見られます。
数年前、『フラット化する世界』という本が売れました。インターネットの普及によって、世界は同質化の方向に向かうという話がまことしやかに喧伝されました。でも、現実はそうなっていません。国や民族ごとの違いは厳然として存在しますし、むしろ違いを強調する傾向も見られます。
日本のこれからを考えるとき、日本的なるものの重要性は、これまで以上に増してくると思います
世界中が熾烈な競争の中に巻き込まれています。最も顕著なのがコスト競争です。同じ品質であれば少しでも安いものが競争力を持つのは事実です。日本も一時期、コスト面での競争力を持っていました。しかし、これだけ生活水準が向上し、ひとり当たりの所得が高くなった日本がコスト面だけで競争し続けるのは無理があります。
そこで、重要になるのが他国にはまねできないもの、すなわち日本的なるものが生み出す価値です。日本企業は、品質の作り込みを得意としてきました。買ったその日から完璧に走る自動車は、世界の自動車業界の常識を塗り替えました。サービス面にもいても、おもてなしの心は他国にはまねできないきめ細やかさを持っています
いいものは値段が高いというのが世界の常識です。質の高いサービスにもちゃんとした値段がつくのが国際相場です。日本企業が提供する財やサービスの水準は、世界の平均をはるかに超えています。問題は、それにどれだけの値段をつけられるかです。
日本は、これから、ナンバーワンではなくオンリーワンの分野で競争力を持つべきです。そう考えると、私たちが大切にしてきた季節感の現代的意味が見えてくると思います
投稿者プロフィール

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法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール
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