情報の収集・整理・分析(その1)

多様化する情報源


 現代社会は、情報源に事欠かない。テレビやラジオといった放送媒体や新聞や雑誌などの紙媒体が長らく情報源として機能してきたが、10数年前からイン ターネットが重要な情報源として頭角を現してきた。とても安い値段でたくさんの情報を集めることができるのが現代社会である。


 インターネットが普及すると新聞は衰退していくのではないかと言われてきた。朝起きると、パソコンに必要な情報が送られてきていて、人々はそれを見て一 日をスタートするという姿が描かれたことがある。しかし、2007年の半ばを過ぎた現在、このような構図は一般的になっていない。人々は、いまだに新聞を よく読んでいるし、発行部数が減少傾向にあるとはいえ、紙媒体の存在感は大きい。


世界一の発行部数を誇る新聞


 日本には、世界一の発行部数を誇る新聞がある。読売新聞である。朝夕刊合わせて約1400万部が発行されている。また、日本は全国紙のシェアが高い点で も他の国とは一線を画している。もちろん、同じ全国紙でも、東京発行のものと大阪発行のものでは紙面の作り方や記事が少しずつ違う。また、版によっても記 事の組み方が違ったりする。しかし、基本的に同じ内容の記事を多くの国民が読んでいることに変わりはない。


 アメリカには、ワシントンポストやニューヨークタイムズといった世界的に名の通った新聞があるが、発行部数は意外と少ない。ニューヨークタイムズが112万部、ワシントンポストは69万部である。アメリカで最も発行部数が多い新聞はUSA Todayであり、それでも227万部でしかない。アメリカの人口は日本の2倍強であることを考慮に入れると、読売新聞の発行部数がいかに多いかがわかる。


 では、アメリカ人は新聞を読まないかというと、半分正解、半分不正解である。まずは、国民全体の中で新聞を毎日読んでいる人の割合は日本よりもはるかに 低い。アメリカ人は、テレビやラジオで世界のニュースを得ている。他方、地域ごとの新聞発行はとても盛んである。地元で起こった事件やイベントの紹介な ど、まさに地域密着型の新聞は無数にあり、発行部数を計算することさえ困難だという。


世界情勢を知ることの意味


 私たちは、地球の裏側で起こったことを知らなくても十分幸せに生きていける。ギリシャで大規模な山火事が起こっているとか、イラクのバグダッドで死者 200名を超えるような大規模な自爆テロが起こったといった事件を知らなくても、何も困らない。しかし、世界の各地域が相互依存度を高めている現在、一見 関係なさそうに見える事件や出来事が、回り回って私たちの生活に大きな影響を与えることがある。


 例えば、最近、オレンジジュースの価格が上がってきた。これは、バイオ燃料の原料になるトウモロコシの価格が上がり、オレンジ畑をトウモロコシ畑に転換 する動きが広まっているからだという。地球温暖化を少しでも食い止めるために、化石燃料に代わる燃料を世界各国が求めている。トウモロコシはエタノールの 原料であり、エタノールをガソリンと混ぜて使うと二酸化炭素の排出量が少なくなる。カネになる作物を作ろうとするのは経済合理的な判断であり、トウモロコ シの作付面積が増えるのは自然の成り行きである。


 食糧自給率40パーセントの国に住んでいる私たちは、世界の情勢から自由であることはできない。世界が平和であれば食料は安定して入ってくるが、戦争状 態になると、とたんに食糧供給は細くなる。食糧安全保障の観点から必要とされるのは、自給率の上昇を図ることと、世界の安定に寄与することである。日本国 民が全国紙を毎日読み、日本国内の出来事だけではなく世界情勢にも関心を持つのは、日本が置かれた立場上、必要なことだと言えよう。(次回は、どうすれば 必要な情報を収集できるかについて考える)

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール