信頼されるコンサルタントの条件

コンサルタントのイメージ


 私は、コンサルタントという言葉にあまりいいイメージを持っていない。うさん臭い感じがするからである。コンサルタントは、英語のconsultの名詞 形であり、consultとは専門家の意見を求めることである。医者に診察してもらうことをconsult a doctorというところから見ると、英語の語感には「頼りになる」ことが含まれているようである。


 日本語でコンサルタントというと、ある分野に精通していて、相談に乗ってくれて助言をしてくれ、問題解決に向けて指導してくれる人のことである。相談に 乗る(カウンセリング)、助言する(アドバイス)、指導する(コーチング)という3つの行動がコンサルタントには期待されている。それぞれに高度な技術を 必要とする役割であり、この3つがそろっていれば顧客から信頼されるコンサルタントになれるはずである。


結局は傍観者


 私がコンサルタントに対してマイナスの印象を持っているのは、どんなにえらそうなこと言っても結局は傍観者でしかないと考えているからだと思う。コンサ ルタントは、問題の原因を分析し、処方箋を書くことはできる。しかし、実際にそれを実行するのは企業人たちである。現実の世界には、わかっているけれども できないことがたくさんある。「そのしがらみを今こそ断ち切ってください」とコンサルタントは言うけれど、それができれば誰も苦労はしない。できないから 何とか助けてほしいと思っているのである。


 大きな改革には、それを実行する人と実行を推進するエネルギー、そして時勢が必要である。どれ一つ欠けても改革は成功しない。実行者が現れ、「これをし ないとわが社はつぶれる」というネガティブ・エネルギーが出てきても、時が満ちなければ歯車を逆回転させることはできない。ただ、時勢は単に待っているだ けではやってこない。時の流れを引き寄せるのも実行者のウデである。実行者には、改革に向けてさまざまな布石を打ち、人々の気持を一つに結集させる仕組み を用意するだけのしたたかさが備わっていなければならない。


信頼されるコンサルタントの条件


 コンサルタントは、企業を客観的に見ることができるため、当事者が気づいていない点を指摘して、軌道修正をうながすことができる。顧客に対して、「あ あ、そうだったのか」という気づきをどれくらい与えられるかで、コンサルタントの有り難みが決まってくる。小さな変化を察知し、そこから問題の本質に切り 込んでいけるような感覚を持っていないと、信頼されるコンサルタントにはなれないのである。


 信頼されるコンサルタントになるためのもう一つの条件は、リスクを負うことである。通常、コンサルタントは、問題解決に向けて大きな設計図を描く。問題 の原因を分析し、解決のために何をしなければならないかを理路整然と説明してくれる。しかし、最初の一歩をどう踏み出したらいいのかについては、必ずしも 明確にしてくれない。具体的な行動を示すことは、それが効果を持たなかったときに責任を問われることになるからである。誰しもリスクは負いたくない。だっ たら、当たり障りのないところで止めておくのが得策だということになる。


 しかし、これでは顧客の心はつかめない。「このコンサルタントは本気だ」と思ってもらえなければ、顧客はついてこない。真剣かどうかは、話していれば自 ずとわかるものである。進退をかけるくらいの気迫で臨んで初めて、「この先生の言うことを聞いてみようか」という気になってくれる。単なる傍観者ではな く、当事者の一人として課題に立ち向かうくらいの気概を持つことが、信頼されるコンサルタントになるための重要な条件である。

投稿者プロフィール

藤村 博之
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
法政大学大学院 職業能力開発研究所 代表
NPO法人 人材育成ネットワーク推進機構 理事長
詳細:藤村博之のプロフィール